会議録情報
令和元年十一月十三日(水曜日)午前九時開議
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
…………………………………
委員長 松島みどり君
法務大臣 森 まさこ君
最高裁判所事務総局人事局長 堀田 眞哉君
政府参考人(法務省民事局長) 小出 邦夫君
委員 串田 誠一君
質疑
○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。
きょうは裁判官の報酬等をということでございますので、この報酬というのは、言うまでもありませんが、国民の税金で支払っていくということでありますから、果たして国民が納得するような報酬の値上げになるのかということを確認していきたいと思うんです。
まず最初に、裁判官は憲法に条約を遵守することが記載されていることを知っているのかどうか、確認をしたいと思います。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判官はいずれも、憲法九十八条二項が、日本国が締結した条約及び確立した国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とすると規定していることを知っているものと承知しております。
○串田委員 裁判官は条約をどのような形で遵守しようとしているのか、具体的なものを挙げて説明していただきたいと思います。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
裁判官は、自己研さん等によりまして、条約や確立された国際法規に関する知見及び理解を深めるなどといったことを通じまして、その職権を行使するに当たって、我が国が締結した条約等を遵守しようと努めているものと承知しております。
○串田委員 今、個人に任せているようなことのようなんですけれども、条約に関して裁判官に研修を行っているというようなことはあるんでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官の研修を担当いたします司法研修所におきましては、任官時を含めまして、新しい職務又はポストについた裁判官等に対しまして実施する各種研修の中で、条約や国際人権法をテーマとしたカリキュラムを実施しているところでございます。
○串田委員 具体的には、本年二月に子どもの権利委員会、国連が勧告をしている。その中に、裁判官に子どもの権利条約の研修をしなさいという勧告がありました。これは、裁判所としては承知をし、そしてその勧告どおりに研修を行っているのかどうかを確認させてください。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
委員御指摘の勧告については、裁判所としても承知しているところでございます。
先ほどお答え申し上げましたとおり、裁判官の研修を担当しております司法研修所におきましては、任官時を含めて、新しい職務又はポストについた裁判官に対して実施する各種の研修の中で、国際人権法を専門とする大学教授や、人権擁護に携わっている国内及び国際機関の職員等を講師として招きまして、児童の権利に関する条約、いわゆる子どもの権利条約でございますが、を含む各種人権条約に関する講演のカリキュラムを実施しているところでございます。
さらに、その他の研修におきましても、児童の権利保護及び福祉に関する諸問題を取り上げたカリキュラムが行われておりまして、その中で、児童の権利に関する理解を深めているところでございます。
○串田委員 今指摘されました子どもの権利条約というのは、一九九四年に批准をしているわけです。これは、国民も大変期待をし、それに応えて、国会が承認をし、そして政府が批准をしてきた。
この一九九四年を境にして、裁判所は、この子どもの権利条約をどのような形で現場の訴訟運営に活用してきたのか、調査をしてきたのか、これについて御答弁いただきたいと思います。
○堀田最高裁判所長官代理者 先ほどもお答えいたしましたとおり、裁判官はいずれも、その職権を行使するに当たりまして、我が国が締結した条約を……
○松島委員長 繰り返しは簡潔にお願いします。
○堀田最高裁判所長官代理者 遵守しているものと承知しておりますが、具体的にどのように実践しているのかなどについて調査を行ったことはございません。
○串田委員 調査を行っていないということなんですが、日弁連六十年記念誌に次のような記載があります。
離婚紛争に伴い、親の一方が別居するに当たって子を一方的に連れ去ったり、別居している非監護親が子を連れ去ったりするなどの事態がしばしば生ずる。本来、子の監護をめぐる紛争は協議によって解決するか、協議が調わないときは家庭裁判所の手続によって解決すべきものであり、そのような手続を経ないで子を一方的に連れ去るのは違法である。しかし、我が国では、このような違法な連れ去りがあったとしても、現状を重視する実務のもとで、違法行為が全く問題とされないどころか、違法に連れ去った者が親権者の決定において有利な立場に立つのが一般である。
これは、日弁連の六十年記念誌ですよ。一般である。これは、二十一年の、二〇〇九年ですね、日弁連六十年というのは。とうに、一九九四年の子どもの権利条約を批准してからもう随分たっているんです。たっていながら、違法に行った者を問題にしないどころか、違法に連れ去った者が親権者の決定において有利な立場に立つのが一般である、これが現状を重視する実務のもとでと書いてあるんです。実務を担当しているのは裁判官じゃないんですか。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官が個々具体的な事件においてどのような判断、運用をしているのかについては、最高裁の事務当局の立場といたしましてはお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
○串田委員 調査もしていないわけですよ。そして、これは日弁連の六十年記念誌ということですから、現場を担当している日弁連が、一般であると言っているんですよ。
これに対して、そうじゃないという言いわけをすることは、調査もしていないんだからできるわけもないだろうし、現実に、研修というのも個別にやっているというだけであって、一九九四年から実務がどれだけ変わったのかの調査もしていないわけでしょう。調査もしていない中で、二〇〇九年の段階で、違法な状況を問題にするどころか、その者を有利な立場にしているのが一般であると言っているんですよ。
全く条約を生かそうとしていないどころか、違法な状況をそのまま看過しているだけではなくて、そちらを有利にしている、こういうようなことを家族法の中でやり続けながら、報酬を値上げするということ、今から反省しませんか。どうでしょう。
○堀田最高裁判所長官代理者 先ほどもお答えしたとおりで、繰り返しになりますが、個々の判断、運用についてはお答えを差し控えたいと存じますが、一般的に申し上げまして、裁判官は、条約を遵守して日々の職務の遂行に当たっているものと承知しているところでございます。
○串田委員 繰り返しの答弁になるかと思うので、日弁連が、こういう状況が一般であると言っているわけですから、本当に、一九九四年の子どもの権利条約を、現実の実務、これは、条約と法律というのは条約の方が上である、これはよく法律でも学ぶと思いますし、憲法では、裁判官を名指しして、条約を遵守しなさいと書いてあるわけですよ。
そうなると、例えば七百六十六条に書かれていることも、これは明治時代からほとんど変わらないような規定の中で、協議をするというのは改正されました。改正されたというのは、協議をするということをこれは期待して書いてあるわけであって、そうでないようなアンフェアなやり方というのは違法であるというのは、これは日弁連もちゃんとはっきりしているわけですよね。
そうだとするならば、ちゃんとこの条約を遵守して実務に生かしているのかどうか、早急に調査をしていただくということを約束していただけませんか。それとも、日弁連のこういう指摘というのは無視していいということでしょうか。いかがでしょう。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官がその職権を行使するに当たりまして、どのように条約を遵守しているのかなどといった事柄につきまして具体的に調査をすることにつきましては、裁判官の職権行使の独立との関係で慎重な検討を要するものと考えているところでございます。
○串田委員 いや、思想、信条を調べよと言っているわけじゃないんですよ。憲法が要求していることを遵守しているかどうかというのを裁判官に聞くのは、これは当然じゃないですか。職務の執行をちゃんと行っているかどうかというのを監視した上で、そして報酬を上げるというようなことは当然あると思うんですよ。
憲法を遵守しているかどうかの確認をすることがどうして問題なのか、説明してください。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官がその職権を行使するに当たりまして、条約をどのような形で適用し、それでどのような形の判断をするのかというのは、職権行使の独立と関係する問題というふうに考えておりまして、先ほどお答えした次第でございます。
○串田委員 これも繰り返しで、続けませんけれども、職務の独立ということと、憲法を守る裁判官であるかということの確認というのは、私は違うと思いますよ。ちゃんと憲法にのっとって、条約を守るということは憲法に書いてあるわけですから、この憲法をしっかりと守っているかどうかということの確認をするのは当然だと思うし、国民は期待をして、条約を批准しているのを見守っているわけですよ。そして、それを、信託を受けた国会がいろいろな調べ等をして条約の承認を同意し、そして政府が批准しているわけでしょう。その条約を裁判官が守らなかったら、条約を批准した意味がないじゃないですか。
そして、条約をとても守っているとは思えないようなことが日弁連からこうやって指摘されているんだったら、ちゃんと条約を遵守しているのかというような調査をするのは当たり前じゃないですか。それでも、独立ということで放置している、そういうことになるんでしょうか。
もう一度、最後に、この質問についてはお答えいただきたいと思います。
○松島委員長 堀田局長、質問に対する正しい答え方をしてください。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判官が条約を遵守しなければならないということは委員御指摘のとおりでございますが、ただ、具体的に、どのような形で条約を遵守しているのか、していないのかということを調査をしようということになりますと、裁判官の判断事項と密接にかかわってまいりますことから、先ほどのようにお答えしたところでございます。
○串田委員 昨日、参議院でもとてもいい質問があったと思うんです。その中で、養育費というのは、これは子供の貧困というものを考える上では改善していかなきゃいけないというのはよくわかるし、私は、前の成人年齢引下げにおいて、離婚調停を、その前につくられている、成人に至るまでというのは、これは二十というふうにちゃんと書かないと、十八歳と勘違いする人もいるということで、小野瀬民事局長と相当やり合って、法律に書いてくれと言ったんですけれども、それはできないというので、じゃ、ちゃんと広告してくれという話をしたら、法務省は、これについてはしっかりと広告をしていただきました。
養育費を払うのは当然だと思うんです。しかし、きのうの参議院の質問の中では、面会交流もやはりこれは重要であるということのお話の中で、面会交流が順調にいっていれば養育費の支払いもスムーズにいくというアメリカの例もあるという説明を受けた際、大臣は、日米の違いもあるというお答えで、はっきりとお答えはいただけなかった。確かに、日米の違いはあると思うんですよ。
ただ、今ちょっと質問させていただいた中で、日弁連も、違法な状況をそのまま看過した上で、さらに有利に扱っているという状況が一般的な今の法制度のもとで、やはり公平な形で、養育費も約束を守る、面会も約束を守り、さらには、それは子どもの権利条約に書かれているような共同で養育をするということを実現していくということが両輪でなければ、片方だけを一方的に何か重視しているんじゃなくて、両輪でなければいけないというのは、これは日米とは関係がないと思うんですよ。
大臣、これは、通告の後の参議院の質問なので、ないですけれども、御本人のお答えですので、これについて、日米という問題ではなくて、両輪であるということをはっきりと明示していただきたいと思います。
○小出政府参考人 お答えさせていただきます。
家庭裁判所が親権者や監護者の指定をする場合におきましては、どちらの親を親権者、監護者とするのが子の利益に資するかという観点から判断がされているものと承知しております。
具体的には、その子の出生以来、主としてその子を監護してきた者が誰かということのほか、父母の側の事情として、それぞれの養育能力、子に対する愛情、監護に対する熱意、居住環境、面会交流に対する姿勢、監護補助者の有無及びその体制を考慮するとともに、子の側の事情として、その年齢及び発達、心情や意向等の諸事情を総合的に考慮して判断がされるものと承知しております。
それから、養育費と面会交流との関係でございますが、養育費は面会交流をすることができていない親でも支払う義務を負うものであります。他方、子供と同居している方の親は、養育費の支払いがされていないことを理由に面会交流を拒むことができるものでもございません。
このように、面会交流と養育費の支払いとは制度上の直接の関連はないわけでございますが、実際上は、面会交流が十分に行われると養育費の支払いがより行われる傾向にあるとの指摘が一般的にされているものと認識しております。
このため、養育費の支払い確保という観点、また面会交流が適切に行われるという観点、この双方は非常に重要なことであると考えているところでございます。
○串田委員 それがそのまま本当にそのとおりにいっていれば、日弁連もこういう書き方はしないし、そして、昨年は二十六カ国のEUからの抗議文、ことしは二月の国連の勧告、アメリカの不履行国という認定もありましたけれども、日本のやはり家族法というものをもうちょっと謙虚に、諸外国からそういう指摘がある、日弁連からもそういう指摘があるということに関しては、独自に考えないで、やはり謙虚に、その条約にのっとった運営というものをしていただきたいと思います。これについては、今後また質問させていただきます。
ありがとうございました。
○松島委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○松島委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。串田誠一さん。
○串田委員 裁判官の報酬等に関する改正法案に対して、反対の立場から討論します。
日本維新の会は、人事院が大企業を前提とした報酬決定に関して、国民の生活水準から乖離しているということで、一貫して反対をしてきました。
さらに、裁判官については、以下の理由から反対させていただきます。
日本国憲法は、裁判官を指名し、条約の遵守を要求しています。
条約は国会の承認のもとに政府が批准するものであり、三権分立の関係から、裁判官が独自の判断で拒絶することはできません。
日本が一九九四年に子どもの権利条約を締結し、父母が共同して養育することを決めたのは、国会の承認のもと、政府が他国との信頼を築くために批准したものです。条約締結国は百九十六にも上る、最も締結率の高い条約です。
裁判所も、この条約の締結した時点から、条約の趣旨にのっとり、法律解釈や運用において、条約の規定どおり、共同して養育がなされるような訴訟運営を行うべきことは、憲法上の義務でもあります。
また、条約締結の五年後には、男女共同参画社会基本法が成立しました。男女が平等に育児を営むことも書かれています。
現実はどうでしょうか。裁判官は条約を遵守していると言えるでしょうか。言えるとしたら、今日の他国からの非難も、このような形でなされていないはずであります。
これらの状況を顧みると、とても報酬を上げることは国民の納得を得られないものと考えます。
裁判官こそ、真っ先に家庭裁判所のビデオを見て、条約の趣旨を学んでいただきたいと思います。
以上のとおり、反対の討論とさせていただきます。
○松島委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○松島委員長 これより採決に入ります。
まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○松島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○松島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
0コメント