会議情報
令和元年十一月二十七日(水曜日)午前九時開議
委員長 松島みどり君
法務大臣 森 まさこ君
最高裁判所事務総局家庭局長 手嶋あさみ君
委員 串田 誠一君
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
質疑
○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。
一般質疑も、法務大臣の交代ということもあって削られてきております。そういう意味で、きょうは、細かな数字をお聞きするということはございませんので、なるべく大臣から今のお気持ちをお聞きしたいというふうに思っています。
まず最初に、その意味で大臣にお聞きをしたいと思うんですけれども、会社法における話も、立法事実というのが出てまいりました。これは、国民がどういういろいろな不便を持っているか、社会がどういう不便を持っているのかという事実に基づいて法改正というのは考えていかなきゃいけないという意味で、きょうは、大臣が国民の一人という、当事者になった気持ちでお答えをいただきたいと思うんですが、夫婦で子供を育てているときに、夫婦の関係が悪くなって、一方の配偶者が子を連れ出していってしまったというときに、大臣が子を連れ去られた側、いわゆる別居親という言い方もするんですけれども、そうなってしまったときに、大臣としてはどういうことを、国民の一人としてどういうことができるか、お答えをいただきたいと思います。
○森国務大臣 一般的なことしかお答えできないんですけれども、一般に、一方の親が他方の親に子を連れ去られた場合についてお尋ねがございました。
子を連れ去られた親は、親権や監護権に基づき、子を連れ去った親に対して子の引渡しを求めることが考えられます。子を連れ去った親がこれを争う場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。そして、子の引渡しを命ずる旨の審判等が確定したにもかかわらず相手方が引渡しに応じない場合には、強制執行を申し立てることができます。
また、刑事法関係について申し上げますと、犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄ではございますが、一般論として、未成年者略取誘拐の罪は、未成年者を略取し、又は誘拐した場合に成立するものとされておりまして、これに該当する場合には同罪が成立することとなります。
○串田委員 刑法の成立の余地をしっかりとお答えをいただきました。
ところで、今、家庭裁判所に申立てができるということなんですが、この家庭裁判所への申立てをした場合の審理期間の平均値と、そして面会交流が決定されたときの一番多い事例、これを裁判所にはお答えをいただきたいと思います。
○手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
子の監護に関する処分事件のうち面会交流の審判及び調停に関しまして、平成三十年における平均審理期間でございますが、これは九・〇カ月というふうになってございます。
また、これらの審判及び調停で面会交流の回数を具体的に定めたものの内訳につきまして、平成三十年で申しますと、一回以上の定めのものが約六一・五%、そのほかに、月二回以上の定めのものが約一二・九%、週一回以上の定めのものが約二・三%となっております。
○串田委員 今大臣もお聞きいただいたと思うんですが、大臣がお答えをしたのは、まあ、法律上の手続はそうだとは思うんですよ。だけれども、連れ去られた側が、連れ去ったというのは実力行使なんです、何の法律上の手続もしていないんです、なのに、裁判所に申立てをすると、平均で約九カ月かかるんです。その間、子供に会えるかといったら、大概会えない。子供に会うことの、先ほど強制執行ができるというようなことをおっしゃられましたが、できることを決められる回数というのは月一回なんですよ。二時間ということもあるんです。
大臣、連れ去った側は圧倒的に、裁判をやっても九カ月は、相手方が申立てをしなきゃいけない。それも、大臣は法律家ですから、すぐに、申立てをするなんてわかりますけれども、連れ去られた側は、一体どうしたらいいのか。ほかの国を見たら、みんな犯罪だ、警察がみんな取り戻してくれる。日本は何もやってくれない。右往左往ですよ。右往左往しながら裁判所に申立てをして、九カ月かかる。そして、決められるのは、月一回、二時間というのが多いんです。連れ去った側は、二時間を引いた全部が子供を確保できる。連れ去られた側は月一回ですよ。それを、強制執行できるということで納得できますか。連れ去った側だけがそういうような圧倒的な有利になっているというのが今の日本の現状なんです。
そこで、日弁連の六十年、きょう参考資料に出しました、こんな立派な本になっているんですけれども、そこには、「手続を経ないで子を一方的に連れ去るのは違法」と書いてあるんです。これはここに書かれていますけれども、この認識は大臣も同じなんでしょうか。
○森国務大臣 委員御指摘の日弁連六十周年記念誌において、協議や家庭裁判所の手続を経ないで子供を一方的に連れ去ることは違法であるとの言及がされていることは承知をしております。
同居をしていた父母の一方が相手方の承諾を得ずに子供を連れて別居を開始した場合に、民事上違法となるか否かについては、その具体的な経緯及び態様、子供の年齢や意思等の事情によるものと考えられ、一概にお答えすることは困難であります。
また、刑事責任の観点から申し上げますと、同居していた父母の一方が相手方の承諾を得ずに子を連れて別居を開始したことが犯罪になるかどうかは、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であり、お答えは差し控えさせていただきますが、いずれにしても、父母が離婚した後であっても、子供にとって、父母のいずれもが親であることには変わりはございません。したがって、一般論としては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子供の養育にかかわることが、子供の利益の観点から非常に重要であると考えております。
○串田委員 手続を経ないで一方的に連れ去るのは違法であるというふうに断言をされている。これは日弁連の六十年誌なんですが、ここにたくさんの方々がいろいろな部分を振り分けして書かれていますけれども、皆さん、この業界の権威の人たちですよ。そして、こんな本にまでなるんですから。それに対してずっと携わってきた方々が担当して書いてあるんです。
手続を経ないで一方的に連れ去るのは違法であるという前提がなければ、ハーグ条約というものを批准できないんじゃないですか。どうしてハーグ条約、大臣、批准しているんでしょう、政府は。これは、違法であるということを前提にしているから、戻すということの条約を批准しているんじゃないですか。大臣にお聞きしたいと思います。
○森国務大臣 児童の権利条約第七条1では、児童は、できる限りその父母によって養育される権利を有することとされ、また、同条約第十八条1では、締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払うこととされております。
我が国は、平成六年にこの条約を批准しており、同条約を遵守する義務を負っているものと考えます。
○串田委員 今も明確に、共同養育をする義務を我が国は負っているということなんですが、大臣、この共同養育の義務を負っている我が国の法整備としては十分だとお思いでしょうか。お聞きをします。
○森国務大臣 委員御指摘のような御意見があることは承知しておりますが、現在、家族法研究会において、離婚後の子の養育のあり方について、多角的な見地からさまざまな意見が交わされるものと承知しております。
○串田委員 研究会で研究していただくのはいいんですけれども、現状が違法、今の現状が義務を果たしているかどうかというのは判断できると思うんですよ。そこまで研究会が行うわけじゃないですから。
今大臣は、この条約は、共同養育を我が国はしなければいけないという義務を課せられ、そして、この権利条約には、しっかりと措置を講じなければならないという規定もあります。だから、その規定が今この国には備わっているのかどうかというのは、大臣、判断できると思うんですが、いかがでしょう。
○森国務大臣 まず、一般論として申し上げますと、面会交流が適切な形で行われることは、子供の利益を図る観点から極めて重要であると思っております。
もっとも、共同養育の内容は多義的でありまして、どの程度の頻度で面会交流を行うのが子供の利益にかなうのかは、個別具体的な事案ごとに異なるものと考えられることでございますので、一概にお答えすることは困難であります。
○串田委員 毎回、個別という言い方をして答弁を避けるのはもうやめていただきたいんです。なぜなら、裁判所が先ほど、月一回というのが一番多いと答えたんです。ですから、大臣、月一回というのは共同養育として十分だというのが大臣の考えであるかどうかを確認したいと思います。これは個別具体的じゃないんです。裁判所のたくさんの数の中の最大値なんです、月一回。
○森国務大臣 今申し上げましたとおり、共同養育の内容が多義的でございますので、一カ月に一回の頻度で面会交流を行うことが共同養育と言えるかどうかについては、個別具体的な事案ごとに異なるものと考えられますので、一概にお答えすることは困難であります。
○串田委員 そうしますと、ことしの二月に国連の勧告が、この条約をしっかりと遵守するように、共同で養育をするようにというふうに我が国に対して勧告をしているという認識は、大臣、おありなんでしょうか。
○森国務大臣 委員御指摘のように、児童の権利委員会から本年二月に、父母による児童の共同養育を実現するため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正するとともに、子供と離れて暮らしている親と子供との定期的な人的関係及び直接の接触を維持することを確保すべきであるとの勧告があったことは御指摘のとおりでございます。
我が国の親子法制については、法律面及び運用面のいずれについても、子供の利益の観点から必ずしも十分なものとなっていないとの指摘もされているところであり、この勧告もこのような指摘を踏まえて行われたものと理解しておりまして、この点について真摯に受けとめております。
○串田委員 個別具体的と申しますと、今大臣が当事者になったらどうなるかというお話をしたんですが、もし大臣が当事者になって配偶者に連れ去られた場合は、大臣が会えるのは月一回ですよ、大概みんなそうなんですから。それを大臣が納得するかという話です、個別具体的なんという国会の議論で。月一回が家裁の数値なんですよ。
そして、この六十年誌にはこういう表現もあります。最高裁にお聞きをしたいんですが、「違法な連れ去りがあったとしても、現状を重視する実務のもとで、違法行為がまったく問題とされないどころか、違法に連れ去った者が親権者の決定において有利な立場に立つのが一般である。」このようなことが日弁連の記念誌に書かれているんですけれども、裁判所としてはこのようなことを主張される意識はあるんでしょうか。
○手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
家庭裁判所におきまして親権者の指定をするに際しましては、子の利益を最も優先して考慮しているものと承知しております。
家庭裁判所において子の利益を考慮するに当たりましては、父母の側の事情や子の側の事情を総合的に考慮しておりまして、従前からの子の養育状況に加え、現在の監護状態がどのような態様で開始されたかといった事情についても適切に考慮しているものと承知しております。
いわゆる子の連れ去りや連れ戻しがされる事情はさまざまでございまして、例えば、配偶者から家庭内暴力を受けていた親がやむにやまれず子を連れて別居するといった事案もあるものと認識しておりますが、他方で、一方の親が子を連れ去った際の態様等が悪質である場合に、そのことをその親に不利益な事情として考慮することもあるものと承知しております。
○串田委員 原則は、連れ去ったら違法だという前提から始まらないと、世界は通用しないですよ。
この六十年記念誌には、「子の連れ去り天国であるとの国際的非難を受けている」となっています。大臣、こういう非難を受けているという認識はあるんでしょうか。
○森国務大臣 父母の一方が他方の配偶者に無断で子供を連れて家を出ていったために、子供と離れて暮らすことになっている親がいること、そして、我が国におけるそのような現状についてさまざまな意見が国内外にあることを承知しております。
そして、委員が今、子の連れ去り天国であると非難されていることについてお尋ねがございましたが、そのような声があることを承知しております。
○串田委員 今は北朝鮮まで、日本を拉致大国と言って非難しているんです。これはアメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国もそうですけれども、北朝鮮まで今、日本こそが拉致大国だ、拉致天国だ、こう言っているんですね。ニュースにもなっているわけです。
そういう中で、ハーグ条約に違反して子供を連れてきた場合には、国際指名手配になり、あるいは重罪になるわけですけれども、このような状況に国民を危険にさらしているというのが、法務省がしっかりと、子の連れ去りというのは原則は違法なんだよ、いけないんだ、裁判所も、子を連れ去るということ自体はいけないんだというようなことをしてこなかったがために、私は、国民をここまで危険にさらしているというふうに思っているんですが、大臣はそういう認識はないでしょうか。
○森国務大臣 我が国においては、児童の権利委員会から勧告を受け、真摯に受けとめていることを先ほど述べたところでございますが、民事執行法等を一部改正し、国内の子の引渡し及び国際的な子の返還の強制執行をより実効的なものとするために見直しがされたほか、先ほども申し上げました、家族法研究会で現在も親子に関する諸課題について検討をしているところでございますので、法務省としては、引き続き研究会における議論に積極的に参加してまいりたいと思います。
○串田委員 ことしのG20の前にはワシントン・ポスト紙が大きく取り上げておりまして、トランプさんに安倍さんが、北朝鮮の拉致問題を何とかしてくれというようなことを紹介しながら、そこの最後の記事は、日本が先だろう、日本が子供を返すのが先だろう、こう書いてあるんですね。
私はずっとブルーリボンをつけているし、拉致問題は日本の主権を脅かされているというふうに思っているので、私は日本の最大の課題だと思っているんですが、こういうようなことで、法務省が、国連からも勧告を受け、去年も二十六カ国から抗議を受け、フランスやイタリアは国営放送でずっとドキュメントが流されていく、こういう現状は、私は、この拉致問題に関しても、かなり法務省自身がネガティブな印象を与えてしまっているのではないかなというふうに思っています。
研究会が進むということを私も期待していますけれども、これが立法事実なんだということを、大臣自身が当事者になれば、連れ去るという事実行為だけで、月一回しか会えない。そして、大臣、月一回会えなかったら強制執行できると言うけれども、間接強制しかできないんじゃないんですか、今のところ。そして、裁判所に言って履行勧告といったって、手紙や電話をするだけなんですよ。あとは何にもしてくれないんです。要するに、ずっと会えないで、何カ月も何年も会えない親がいっぱいいるわけですよ。そういう親がいる中で、私は、養育費を払う、金額を上げるということに反対じゃないです、子供の貧困のために。しかし、今のような、面会までできないような親だけが、養育費だけを国が一生懸命やるというのは、やはりこれは車の両輪からすると私はおかしいんじゃないかなというふうに思っています。
きょうは一般質疑が本当に限られているので次に移りますが、また別の機会にお話をしたいと思うんです。
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